「太陽のリング」









もうじき日が沈む…。
熱帯の木々の緑を、紺碧の海を、白い砂浜を、全てを、赤く燃やしながら、太陽が水平線に溶けて行く。
そうして今日もまた俺は祈るのだ、
どうかあの太陽が君の上に降り注ぐようにと。
俺が見た光を君が見れるようにと。
君に訪れる明日が幸せであれば良いと…、そう太陽に願いをかける。


それはまるで、小さな儀式。
毎日飽きることなく繰り返される、密やかな、俺の精一杯の儀式。




あの時あの場所で死ななかったら、俺は君を殺していただろうか?
君の細く白い首に手をかけ、ゆっくりと息絶える君を見ただろうか?
わからない、
何度も繰り返し考えはするけれど…
最後には決まっていつも君の記憶が溢れてくる、
俺にだけ見せてくれたあの無邪気な笑みを、愛しい一つ一つの小さな仕草を、小さな寝息を、君の手のぬくもりを。


ただ一つ思うのは、今、君が何処かで生きているという幸せ。
君が…君がいる限り、俺の心は死ない、
番人としてこの絶海の孤島で生きていく…、その自分の希望の在り処はきっと君だから…。




サービス、君に光を送るよ、
今日も此処から、
祈ってる、
海が太陽を飲み込むまで、ずっと…ずっと……。






















―――辺りは何処までも続く暗闇だった。
吹き付ける夜の砂漠の風は冷たく、静かに、頬を差す。


そして、次第に東の空が白み始める、
幾何学模様にも似た、壮大な砂漠の風景の輪郭を青白い光がなぞり、白藍に染め上げていく。
やがて目を眩ます強い光、
爆発した色彩は光の速さで私の足元に飛び散り、広がっていく。
狭い暗闇から開放された荒涼とした大地は歓喜の声を上げていた。


その中で私はただ立ち尽くしていた。
自分はこの場所に似つかわしくないような…、
身を隠す夜の衣を剥ぎ取られ、彷徨っているような、そんな頼りない気持ちになる。




いつだって朝日は苦痛だった、
そう、あの日から…。
世界をを貫くその眩い光に私の右目が疼くからだ。
何時だって光の先に見るのは、感じるのは、彼の姿。
優しく、明るく、私を照らす…。
まるで包み込まれるような、労わるような
何度も何度も…絶えることなく繰り返される、一日の始まりと共に。
……私にはもう彼を心に想う資格さえないというのに。


こうして一つの場所に留まることなく世界中を飛び回る。
砂漠のオアシスでのバカンスと、人には聞こえがいいかもしれない…。
その実、罪から逃げるかのように彷徨っているだけだ。
けれど…そんな私が何処にいようと、太陽は変わりなく降り注ぐ、熱く、明るく。
許されるはずなど無いのに、なのに…あの光は、
私を満たし、慈悲を与えてくれる…
その度私の胸はどうしようもないほど痛む…、彼を想って。


知らず嗚咽が漏れる。
彼を感じるのに、彼がいないこと、
酷い苦痛を伴う私の罪。




けれども、この君にも似た暖かい光の中に、
どうか…、どうかこの一瞬だけは君を想う事を許して欲しい…。
弱く、罪深い私を許して欲しい……。
ジャン……だから今日も生きるよ…、この星で。












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