「…そういえば久しぶりにハーレムに会ったよ」
口の端をわずかに上げてサービスが言った。
ワイングラスに口をつけてふふ、と小さな笑いをもらす。
「めずらしいですね、あなたがハーレムのことでそんなに上機嫌になるの。何か面白いことでもあったんですか?」
「うん、いやハーレムが連れていた男なんだけどね…おまえに負けないぐらいタレ目だったんだよ。もしかしたらおまえ以上かもしれない」
「なんですか、それ」
いささか気分を害して高松は言った。
「おまえみたいなタレ目、そうそういないと思ってたからびっくりしただけだよ。
ただあっちは金髪のイタリア人だったから印象は全然違うけど…いや、同じか」
「同じってどういう意味です?」
「タレ目の印象なんてみんな一緒ってことだよ。おまえはこんなところにホクロがあるからなおさらだけど」
そう言うとサービスは高松の口もとをさらりと撫でた。
「…サービス。あなた、性悪すぎですよ」
きれいな手からワイングラスをそっと取り、テーブルの上に置く。


  青い、一つきりの瞳がゆっくり閉じられる。
  高松も眼を閉じ、サービスの薄い唇に自らの唇を重ね合わせた。


「…タレ目がどうこうって言いますけど、あなたの今の顔の方がよっぽどいやらしいですよ」
眉を寄せ、眼を細くして自分を見上げてくるサービスに高松は言った。
高松の動き一つ一つに敏感に反応する身体。
とけるようなプラチナブロンドの髪にいとおしく口づける。
「もう…喋るな」
頬を紅潮させたサービスが息も絶え絶えに言う。
「はいはい」
そんなサービスの様子に高松は微笑をもらし、頬に一度口づけるとゆるやかな律動を開始する。
動きに合わせてベッドの上に散る絹糸のような髪。ふとした拍子に現れる右目の傷。
そんなものに煽られ、高松の動きは自然速く、力強くなっていった。
「…高…松…」
「もう、ですか?」
「やっ…」
サービスの瞳に涙が滲む。
「そんな顔しないで」
かるく耳朶を噛みながら言うと、サービスは背筋を震わせて達した。
放心しているサービスに気を使い、そっと身体を抱きしめて滲んだ涙を舐めとった。
浅く、早い呼吸を繰り返すサービス。


  生きている。


  あの男が死んだとき、一度死んだあなたは今、私の腕の中で生きている。
  手放しはしない。
  いつまでもこの関係が続くとは思わないけれど、少しでも長く共に在れるように。


「…高松」
「ん?なんです」
「苦しい。馬鹿力なんだよ、おまえは」
照れたように憎まれ口をたたく。
「それに、おまえ…まだ…」
言いづらそうに口ごもるサービスに高松は笑いを押さえきれなくなる。
「ニヤケ面はやめろ」
「そんなこと言われてもねえ…」
そんなかわいいことをこの美しい人に言われては。

 
拗ねてしまったサービスに口づけし、
それじゃあ遠慮なく、と高松は囁いた。








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